内科の病院へ

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

 次の日の朝、目が覚めた。

 お腹がいたくて目が覚めてしまったのであ
った。

「とりあえずトイレに行こう」

 ベッドから起き上がると、部屋を出てトイ
レに向かった。トイレの前の廊下には、昨日
間に合わずにもらしてしまった大きいのがい
っぱいフローリングには汚いのがべったりと
くっついていた。

 片づけたい、でも片づけるだけの力が、体
力がいまは無い。なるだけ見ないようにそっ
ぽを向いて、トイレの中に入った。しかし、
おしっこは、やはり一滴も出なかった。

「また便秘か」

 昨夜は、便秘薬のおかげで大量に大きいの
が出た。きっと、そのときに自分では気づか
なかったが小さいのだって出たのであろう。
そうだ、いくらなんでも何日もおしっこが出
ないとか、ぜったいそうに決まっている。


 それが一日経って、また出なくなってしま
ったのであろう。そう思った。だったら、ま
た昨日購入したばかりのコーラックを、便秘
薬を飲めばいい。
 そう思ったのだが、いま廊下のフローリン
グに散らかっている大きいのを見ると、とて
もじゃないが便秘薬を飲んで、さらにまた廊
下にフローリングに大きいのを散らかす気に
はどうしてもなれなかった。

「とりあえず病院行って、お医者さんに診て
もらおう」

 もうお医者さんに診てもらうしかない。

 そう思った私は、フローリングに散らかっ
た大きいのは、なるだけ見ないようにしなが
ら、会社にもう一日お休みしたいとメールし
た。
 着替えて1階に降りるとマンションの外に
出た。確か、スーパーマーケットの前を通り
過ぎて、昨日のピンクの小粒・コーラックを
購入したドラッグストアの前に内科の病院が
あったはずだ。痛いお腹を抱えつつ、必死の
思いで病院の前までたどり着いた。


 そして、病院の入り口に倒れ込んだ。

「保険証ありますか?」

 受付の人に言われた。私は、お腹の苦しい
のをこらえつつ、必死でバッグの中から財布
を取り出した。財布の中を探って保険証を取
り出しすと、それを受付の人に手渡した。
 受付の人は、保険証を受け取ると、中で手
続きをしていたが、

「この保険証は期限が切れています」

 手渡した保険証は、悲惨にも私の手元へと
つき返された。

 私は、サラリーマンなのだが会社で健康保
険の加入が無いので、国民健康保険に加入し
ている。保険料は口座引き落としなので保険
料を支払っていないわけではなかった。
 恐らく会社で健康保険に加入していれば、
会社の総務担当者が新しい保険証を手渡して
くれていたのだろうが、国民健康保険なので
新しい保険証は区役所から直接郵送で送られ
てくる。


「こちらも期限の切れた保険証では、後から
保険料をもらえなくなってしまうので」

 そこの内科には、みじめにもフラフラの身
体の状態のまま、冷たく表に追い出されてし
まった。
 郵送された新しい保険証は、書留かなにか
になっているらしく、受取人不在で区役所に
戻ってしまっていたらしい。

「新しい保険証は区役所に保管してあります
ので、区役所まで取りにきてもらえればいつ

でも手渡せます。」

 区役所に電話すると、そう返事された。

 ともかく新しい保険証が無いと、病院で診
てもらうことも出来ない。仕方ないので、家
の近くの内科を出ると、フラフラと表の通り
に歩いて行く。そこでタクシーを拾って、歩
いても10分ぐらいのところにある区役所ま
で駆け込もうと思ったのだ。

区役所で保険証を受け取ったら、


その後は、どこでもいい、区役所の近くの内
科に行って診てもらおう。

「ヘイ、タクシー!」

 そこの内科を後にすると、かっこよく道路
のタクシーを停め、ひらりと乗りこむ・・な
んてことは出来ずに、フラフラの身体で歩道
の地面に腰掛けながら、一生懸命に手を上に
上げて、タクシーを停めようとするのだが、
手が高く上げられず、タクシーの運転手にな
かなか気づいてもらえない。

 それを見かねた近くを歩いていた女性が、
私に代わって手を上げてタクシーを停めてく
れた。女性に御礼をいうと、タクシーの後部
座席にフラフラと乗って横になる。

「区役所までお願いします」

 タクシーは、最短距離で区役所の前まで向
かってくれ、そこで降りると区役所の中に駆
け込んだ。
 そこで、新しい保険証を受け取ると、ここ
から一番近い内科を訪ねた。


なんと区役所の
入り口を出たすぐ目の前の道を渡ったところ
にあるという。

「こんな目の前にあるなんて奇跡だ!」

 私は、区役所の建物を出た。

 そのまま、区役所の前の道を横断して、す
ぐ目の前にある内科のビルに入っていった。
 内科は、エントランスのエレベーターに乗
って上がった2階に在った。

 受付でもらったばかりの保険証をフラフラ
と手渡すと、看護師は、何も言わずに受付か
ら出てきてくれてフラフラの私の身体を抱え
て、医務室の奥のベッドに寝かせてくれた。

 本当は、順番待ちでたくさんの患者さんた
ちが受付の椅子には腰掛けていたのだった。

 だが、私の体調をみて、これは受付の椅子
に腰掛けて、待ってなどいられそうもないと
判断したのであろう。

 医務室の奥のベッドで寝かせられた状態で
お医者さんに診てもらえる順番を待つことと
なった。

「大きな病院へ」につづく