はじめてのクルーザー
はじめてのクルーザー

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第4回

「うちのヨットに乗ってみないか」

 隆は、ヨットハーバーの仲間に声をかけら
れた。その方の年齢は中年を少し上回るぐら
いで、30フィートのセイリングクルーザー
レース艇を所有されている方でした。

 隆とその方とは、まだ隆が小学生でヨット

教室に通っている頃からの知り合いでした。
 隆は、ほかのヨット教室の子どもたちと一
緒になって、よくヨットハーバーの中で大騒
ぎして遊び周っていたので、ヨットハーバー
ではそれなりに有名人だったのです。
 ときには遊びの度が過ぎて、その方にもよ
く怒られたりもしていました。

 そんな隆が大学生になってクルーザーに乗
りたがっているという話を聞いて声をかけて
くれたのでした。


 ちょうど少し前まで乗っていたクルーが今
度、自分の船を購入してしまったため、クル
ーの場所に一人分空きができたそうでした。
 願ってもないことで隆は、その方のヨット
にクルーとして同乗させてもらうことになり
ました。

 隆は、生まれて初めて乗るクルーザーに感
動していました。

 今まで外側からクルーザーの外観しか見た
ことがなかったため、キャビンの中に入って

もいいよと言われて、ドキドキしながらキャ
ビンの中に入れさせてもらいました。

 まず入ってすぐの階段を下りると両側にソ
ファの付いた広いメインサロンがあった。

 そのメインサロンの手前、入り口を入って
すぐのところに小さなL字型のギャレー、キ
ッチンが備わっていました。

 ギャレーの反対側には椅子と机があって、
机の上には航海計器のパネルがいっぱい並ん


でいます。ここがナビゲーションテーブルで
航海の針路を確認したりするところです。

 その後部には、細長いクッションが敷かれ
ていて、そこに潜り込んで寝るのです。

 メインサロンの前方の扉を開くと、そこは
セイルなどが置かれたちょっとした倉庫にな
っていました。
 その倉庫の扉の裏側に小さなトイレが置か
れていました。

「ここがトイレなんですね」

 隆は、ヨットの中にトイレまで付いていて
快適な船内生活がおくれるようになっている
ことに感動していたら、船内のトイレを使う
のは、ゲストか女性ぐらいなんだそうで、男
性は船尾にぶら下がってそこでトイレをする
のだと言われてしまった。

 実際の出航は来週の日曜日なんだそうだ。
隆は、このヨットが気に入ってしまい早く出
航の日曜日が来ないか待ち遠しかった。


第5回につづく