豪華なディナー
豪華なディナー

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第53回

 港の脇にあった温泉?なのかよくわからな
いが、温泉から戻ってくると、戻る途中の道
でマリオネットのメンバーたちと出会った。

 ラッコのメンバーたちは、温泉で体も暖ま
ったことだし、これから船に戻って、夕食を
作って食べようと歩いていたところだった。

 マリオネットのメンバーたちは、港を出て
少し行ったところにある食堂に、夕食を食べ
に行こうと、逆に船から出かけるところだっ
たのだ。

「ちょっと、夕食を食べてきます」
「行ってらしゃい」

 中野さんに挨拶されて、ラッコのメンバー
たちも会釈をして、マリオネットのメンバー
たちとすれ違った。


「今夜の夕食は、何を作るの?」
「そうね、お肉が悪くなってしまう前にと思
って、しゃぶしゃぶにしようかと思っている
んだけど」

 ルリ子に聞かれて、麻美は、今夜の予定し
ていた献立を告げた。

「しゃぶしゃぶ、すごい!豪華!」

 40とか、50フィートもある大きなパワ
ーボートなんかだと、大きな馬力のあるエン

ジンに、船内には、陸上の家庭と変わらない
ような巨大な冷蔵庫が付いていたりして、普
通に、家にいるときと変わらぬ生活を過ごせ
たりするのだろう。
 が、隆たちの乗っている若干33フィート
のヨットでは、スペースはもちろん、電気や
水などにも限りがあるので、陸上での生活と
全く変わらない生活を過ごす、というわけに
は、いかなかった。

「クルージングの前半は、買ってきた新鮮な
食材なども豊富にあるので、けっこう豪華な


食事を楽しめるけど、後半になってくると、
だんだん生ものが無くなってきて、缶詰やイ
ンスタントなどで、料理が侘びしくなってき
てしまうんだよ」

 隆が、皆に説明した。

「でも、私はインスタントのカップ麺とか好
きだけどね」
「そうだよね、美味しいよね」

 大きなエンジンに、大きな発電機、造水機

などで、陸上と全く変わらない生活が送れる
パワーボートも羨ましいとは思うが、限りあ
る生活なので、うまく献立などを工夫して楽
しむヨットの生活も、それはそれでヨットの
醍醐味で、好きなヨットマンが多かった。

「さあ、お料理をしましょう」

 船に戻ると、麻美が中心になって、皆はギ
ャレーで野菜を切ったり、お肉を盛りつけた
りと、夕食の準備を始めていた。


 しゃぶしゃぶと聞くと豪華な食事を想像し
てしまうが、テーブルの真ん中にお鍋をセッ
トして、後はトレイから出した肉をお鍋でし
ゃぶしゃぶするだけだ。
 しかも、ラッコのしゃぶしゃぶは、最後に
は切った野菜までお鍋に入ってしますので、
すき焼きみたいなしゃぶしゃぶだった。

第54回につづく