夕食

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

「今日ね、良明君とごはん食べたんだよ」

 ゆみは、その日の夜、夕食のときに、隆に
学校であったことを報告していた。
 お昼の時間、いつもお弁当を食べていない
良明に、箸で食べさせたことを言った。

「ゆみが、箸で、あーんってして、良明にお
弁当食べさせたのか?」
「別に、あーんってしたわけじゃないけど。
箸で食べさせてあげたの」
「いくら同級生といっても良明のほうがお前

より年上なんだから」
「でも美味しいって食べてくれたよ」

 ゆみが隆に言った。

「良明のお母さん、岡島さんってお料理とて
も上手なんだよな、昔から」

 隆は、高校生の頃を思い出して言った。

「おまえの、ゆみのお母さんよりも料理が上
手だったんだよ。俺がさ、グランドで野球の


試合とかあるとき、お母さんの代わりに岡島
さんがお弁当作ってくると、友達皆で取り合
って食べていたものな」

 隆は、言った。

「そうなんだ。あたしのお母さんの料理は美
味しかったの?」
「まずくはなかったよ」
「まずくなかったってなに、それ」
「お母さんは、岡島さんよりも料理は得意で
はなかったかな」

「そうなんだ」
「ああ、どちらかというと、由香の方がお母
さんよりは料理得意だったかな」
「由香さん、由香ちゃん?」
「ああ」
「由香ちゃんって誰なの?」
「俺がクイーンズの日本人学校で中学、高校
のときの同級生」
「仲良かったの?」
「そうだな」
「お兄ちゃん、好きだったの?」
「まあ」


 隆は、ゆみにのせられて頷いた。

「あ、いいんだよ。由香の話は」
「もっと聞きたい」
「また今度な」

 隆は話を打ち切った。

「でもどうして良明君は、お弁当食べなかっ
たのかな?」

 ゆみはお昼に良明がお弁当を食べなかった

理由を隆に聞いた。

「わからないな。おまえやシャロルがいろい
ろ話しかけるから食べづらかったんじゃない
のかな」

 隆は、ゆみに答えた。

「ところでさ、最近は、ゆみが学校であった
話をしてくれるの良明のことばかりだな」
「そうかな」
「良明とは、仲良くなれたのか?」


「うん、たぶん」

 ゆみは、隆に答えた。

「なら、良かった」
「シャロルも良明君から日本語を習うんだっ
て言ってたよ」
「そうか、それじゃ、ゆみも一緒に日本語を
習ったら良いじゃないか」
「うん」

 ゆみは、隆に大きく頷いた。

「そうだ、明日ね。学校にマンハッタンの人
形劇団が来るんだよ」
「へえ、何しに来るんだ?」
「何しにって、人形劇しにくるのよ」
「人形劇?」
「うん。だから、明日は学校じゅうの生徒は
皆、その人形劇をホールで観るから、学校の
授業は無いの」
「ほお、そうなのか」

 隆は、ゆみに頷いた。


「さあ、9時だ。そろそろ寝よう」

 隆は言った。

「はーい!

 ゆみは隆に返事して、お風呂に入ってパジ
ャマに着替えて眠りについた。ゆみは、生ま
れたときからの病弱のせいで、夜遅くまでは
起きていられない。
 いつも、夜9時にはベッドに入って眠って
しまうのだった。

「おやすみなさい」

 パジャマに着替えたゆみは、隆に言うと、
メロディと一緒に寝室のベッドに入り、眠っ
てしまった。
 メロディも、9時に眠るゆみに付き合って
9時には眠ってしまうのだった。

「人形劇鑑賞」につづく