サマーバケーション

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 午後の授業が終わってゆみは、シャロルと
別れて家に帰宅した。
 ゆみは、兄の隆と二人暮らしで兄は今ごろ
まだ会社なので鍵っ子だった。家のドアを自
分で持っている鍵で開けると、中から嬉しそ
うに愛犬のメロディが、いつも飛び出してき
てくれる。
 ゆみはメロディを撫でてあげるのだ。

 その日もドアを開けると大きな声で嬉しそ
うに吠えながらメロディが出てきた。ゆみは
撫でてあげようとドアを全開に開けようとし

たが、ドアは途中で止まって開かなかった。

 ドアには、中からチェーンがかかっていて
ほんのちょっとしか開かなかったのだ。

「あれ?」

 ゆみは、ドアにチェーンがかかっているの
にびっくりした。メロディの後ろの方から兄
の隆が出てきた。

「おかえり」


隆がドアを開けてゆみを出迎えてくれた。

「どうしたの?」

 兄がいることに驚いたゆみだったが、家に
帰ってきて誰もいないよりも兄がいてくれた
ほうがすごく嬉しかった。

「昨日、遅かったからその分の代休で早退で
きたんだ」
「そうなの」
「さっき、日本から電話があってさ」

 隆は、ゆみに言った。

「手紙も届いたんだけど、この夏休みは、お
まえの従兄弟が日本からニューヨークに遊び
に来るんだってよ」

 隆は、手にした日本から来た手紙をゆみに
渡した。ゆみは、手紙を受け取り、覗き込ん
だが、日本語で書いてあるので何が書いてあ
るのかさっぱりわからない。

「あたしの従兄弟?」


「うん。ま、ゆみの…って言うか、俺の、俺
たちの従兄弟なんだけど」
「うん」
「夏休みを利用して遊びに来るんだって」
「え、あたしの日本にいる親戚に会うのって
初めてだよね」
「ああ」
「どんな人だろう。女の子?男の子?」
「この夏休みに来る従兄弟は女の子だよ」
「やった!」

 ゆみは仲良くなれるかなと思い喜んだ。

「あたしの従兄弟って何年生?」

 ゆみは、隆に聞いた。

「4年生だよ。今年卒業だから卒業前にアメ
リカに来てみたいんだって」
「4年生で卒業?」
「うん。上智大学って日本の大学で英文を習
ってんだよ」

 隆は言った。


「大学生…。あたしと同い年ぐらいかと思っ
てた」
「ゆみと同い年ぐらいの従兄弟はいないな」

 隆は、少し考えてから、

「日本にいる従兄弟の中で一番年下でも高校
生だからな」

 同い年ぐらいだと思っていたので、ゆみは
少しがっかりした。

「夏休みに来るの?」

 ゆみは、隆に聞いた。

「うん」
「そしたら、ディズニーワールドには行かな
いの?」

 ゆみは、心配そうに隆に聞いた。

 毎年、夏休みには、兄も一週間のお休みを
取って、サマーバケーションで二人は、アメ
リカのどこかの町を旅行していた。
 今年の夏休みは、ゆみのどうしてものお願

いでフロリダ、マイアミに行きたいとサマー
バケーションのお約束をしていたのだった。
 ゆみは、フロリダの海も楽しみだったのだ
が、それよりもフロリダにあるディズニーワ
ールドが一番行きたい楽しみのところだった
のだ。

 それが今年は、従兄弟が来るからフロリダ
に行くのは中止になったらどうしようと心配
していたのだ。

「行くよ。従兄弟も一緒に三人で行けばいい


だろう」

 隆は、ゆみに答えた。

「よかった!あたし、どうしてもディズニー
ワールドに行ってみたかったの」

 それを聞いてゆみも一安心した。

「それじゃ、今年のサマーバケーションは、
お兄ちゃんとあたしと従兄弟の三人でお出か
けするの」

「ああ」
「うわ!お兄ちゃんと二人だけじゃなくて、
三人で行けるの楽しそう。早くディズニーワ
ールドに行きたいな!」

 ゆみは、嬉しそうに言った。

「お兄ちゃんと二人だけじゃつまらなくて悪
かったな」

 隆は、ゆみの言葉にちょっと不機嫌な振り
をしてみせながら笑って返事した。


「いつ来るの?」
「だから夏休みにだよ」
「夏休みのいつ?」
「7月の終わりぐらいじゃないかな」

 ゆみは、早く夏休みが来ないかなってワク
ワクしていた。早く夏休みが来ないかなと楽
しみができたゆみだった。
 でも、夏休みが来るまでにまだまだ一ヶ月
以上あったのだが。 

「ゆみの病気」につづく