理香ちゃん

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 この間、ゆみが岡島さんの家に遊びに行っ
た後から、岡島さんの一家とは、すっかり仲
良くなってしまったゆみだった。
 同じアパートメントということもあり、良
明のお母さんが、たまに、ゆみたちの家に遊
びに来てくれる事も多くなった。

 その日は土曜日だった。

 その日の午後も、家でのんびりしていた二
人のところに岡島さん、良明のお母さんが遊
びに来られていた。

 土曜の午後なので、良明は学校の近くの公
園に野球をしに行ってしまっていた。
 隆と岡島さんとは、リビングでゆみの出し
たお茶とお菓子でおしゃべりしていた。
 キッチンでの用事を終えたゆみもやって来
て話に加わる。岡島さんは、一緒に一番末っ
子の理香ちゃんを連れてきていた。

「お姉ちゃんと一緒に遊ぼうか」

 ゆみが声をかけると、最初はお母さんの後
ろで恥ずかしがっていた理香ちゃんも、ゆみ


の側にやって来て一緒に遊ぶようになってい
た。ゆみは、自分に小さな妹ができたみたい
でちょっと嬉しかった。

「お姉ちゃんってアメリカ人なの?」

 ゆみは、理香ちゃんに聞かれて返事に困っ
ていた。ゆみは、アメリカで生まれたため、
出生国のアメリカの国籍も持っていた。
 でも、ゆみの両親は二人とも日本人、兄の
隆も日本人だった。返事に困って隆のほうを
見た。

「いちおう日本人だよ」

 隆は、ゆみに代わって理香に返事をした。

「そうなんだ。だってお姉ちゃんの日本語ち
ょっと変だったから」
「そうか。確かに、ゆみの日本語はへんだし
下手くそだもんな」

 隆は、理香の言葉に大笑いしていた。

「ゆみ、どうする?お前の日本語下手くそだ


ってさ」

 ゆみは、ちょっと悔しかった。

「それじゃ、理香ちゃんがお姉ちゃんに日本
語教えてくれない?」
「うん!」

 理香は、大きく頷いてくれた。

 兄の隆は、良明のお母さんとリビングでお
話している。その間、ゆみは、理香ちゃんと

一緒に部屋でおもちゃで遊んでいた。
 二人が、棚に飾られているたくさんのぬい
ぐるみで遊んでいると、ビーン、と玄関のチ
ャイムが鳴った。

「誰か来たよ」

 ゆみは、理香ちゃんと手をつないで一緒に
玄関に出た。

「はーい、どなた?」


 ゆみがドアを開けると、そこには女の子が
ひとり立っていた。
 ゆみは、この女の子のことを覚えていた。
この間、学校の廊下で出会った迷子の女の子
だった。
 女の子のほうも、ゆみの姿を見てびっくり
しているみたいだった。
 隆が玄関に出てきて、女の子の姿を見た。

「お、由香ちゃん。どうしたの?」

 隆が女の子に聞くと、

「隆お兄さんのところに、うちのお母さんが
来ているって聞いたから」
「来ているよ。中に入りなさい」

 隆は、女の子を家の中に招き入れた。女の
子は、隆に誘われて部屋の中に入った。

「お母さん」

 リビングのソファに座っていた岡島さんを
見つけ、近寄っていた。


「どうしたの」
「公園で遊んで帰ってきたら、隆お兄さんの
ところに行ってるって手紙が書いてあったか
ら来たの」
「理香ちゃんも、うちのゆみと一緒に遊んで
るから、由香ちゃんも、ここで一緒に遊んで
いったらいいよ」

 隆が言って、ゆみのほうを指差した。

「お兄ちゃんのお友達なの?」

 ゆみは、由香のことを隆に聞いた。

「由香ちゃんは、理香ちゃんのお姉さんなん
だよな」

 隆は、由香のことをゆみに紹介した。

「隆お兄さんの妹なの?」

 由香は、隆にゆみのことを聞いた。

「あたし、ゆみさんのこと知っているよ」


 由香は、母親に言った。

「そうなの」
「うん。あたしが学校で迷子になって泣いて
いるときに、ゆみさんが、へんな日本語で声
をかけてくれて、あたしのこと助けてくれた
の」
「それはよかったわね」

 隆も、由香とゆみが学校でそんなことがあ
ったなんて知らなかった。

「でも隆お兄さんの妹だったなんて知らなか
った。だって、ゆみさんってアメリカ人みた
いなんだもん」

 由香は隆に言った。

「それじゃ、ゆみと同い年なの?」

 ゆみは、由香のことを隆に聞いた。

「そうかな」


 隆は、由香にいくつなのか聞いた。

「あたし、7才」
「じゃ、ゆみは9才だから、ゆみのほうが一
つお姉さんだな」

 隆は、由香に答えた。それを聞いて、ゆみ
が隆に聞き返した。

「お兄ちゃんが良明君の妹さんとあたしが同
い年って言ってたのに」
「あ、ゆみと同い年なのは、美香ちゃんのこ

とだよな。由香ちゃんのお姉さんの」

 隆は、由香に確認した。

「もう一人、お姉ちゃんがいるのね」

 それまで黙っていた理香がゆみに話しかけ
た。ぬいぐるみを抱っこしている。

「ゆみちゃん、お部屋に戻ってぬいぐるみで
また遊ぼうよ」
「うん」


 ゆみは、理香と一緒に部屋に戻るときに、
由香にも声をかけた。

「お部屋に行って一緒に遊ぼう」

 由香も、ゆみたち二人について一緒に、ゆ
みたちの部屋に行って遊んだ。



「由香ちゃん、理香ちゃんとお友達になれた
か?」

 その日の夕食で、隆はゆみに聞いた。

「うん。とても仲良くなったよ。また遊ぼう
って約束もしたもの」
「それはよかったな」

 隆は、嬉しそうに話すゆみの笑顔を見なが
ら笑っていた。

「ショッピング」につづく