明日こそ三宅島へ

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第54回

「ただいま!」

 隆たちラッコのメンバーが、キャビンのサ
ロンで夕食を食べていると、マリオネットの
メンバーの皆が、食事から戻って来た。

「お帰りなさい。お食事はどうでしたか」
「うん、まあまあだったね。一昨年、ほかの

船で式根に来たときに食べた食堂が美味しか
ったから、そこにもう一度、行こうと思って
いたのだけど、無くなってしまっていて、そ
れで海水浴場の手前のところに一軒だけあっ
た小さな食堂で、うどんを食べてきた」

 麻美に聞かれて、中野さんは答えた。

「鍋焼きうどんっていうのを頼んだんですけ
ど、量がすごく少なかったんですよ」

 マリオネットの食べざかりの若い男性クル


ーたちには、どうやら、そこの食堂の料理の
量は、少なかったようだ。

「あらら、そうなの。うちのクルー、女の子
ばかりだから、まだ食事余ってしまっている
から、よかったら食べていって」

 麻美は、急いでパイロットハウス側のサロ
ンのテーブルにも、もう一個、カセットコン
ロを出すと、その上にお鍋を乗せて、しゃぶ
しゃぶの準備をした。

 夜中に、横浜マリーナを出航して、ほとん
ど眠らずに夜じゅう走って、伊豆七島、式根
島に到着しているので、今夜は、全員さすが
に眠たかった。
 食事が終わって、後片付けをすると早々に
就寝となった。

「おはよう!」

 昨夜は、早寝でぐっすり眠ったので、目覚
めも良い。


 麻美が一番先に起きて、皆の分の朝ごはん
を作っていた。
 その調理の音で、ギャレーすぐ脇のベッド
で寝ていた洋子、ルリ子が起きてきて、船首
で寝ていた雪が続いて起きてくる。

 一番寝覚めの悪いのは、皆のいるギャレー
から少し離れた船尾のキャビンで寝ていた隆
と佳代だった。

「はいはい、いつまで寝ているんですか」

 二人が、まだベッドの上で眠い目をこすり
ながら、ボーっとしていると、エプロンをし
ている麻美がやって来て、二人を起こして着
替えさせた。

「ちょっと、佳代ちゃん。中身、パジャマの
ままじゃない」

 佳代が寝ぼけて着替えていて、ジーンズと
カーディガンは、ちゃんと着替えているのに
カーディガンの下がパジャマのままだったり
するのを発見して、麻美が慌てて、佳代を連


れて、オーナーズルームに戻って、正しく着
替えさせていた。

「麻美さんって、佳代ちゃんのお母さんみた
い」

 ルリ子が、それを見て、笑っていた。

「さあ、今日こそは三宅島に到着しよう」

 朝ごはんを食べ終わって、出航準備を終え
ると、隆は、ステアリングを握りながら、皆

に言った。

 岸壁に舫っていたロープを外すと、ラッコ
とマリオネットは、式根島港を出港した。

第55回につづく