長電話

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第98回

 その日の夜、麻美は、電話で洋子と長話を
していた。

「そうなのよ。隆ったら、仕事残っていると
いうのに、ヨットのほうが大事とかって言っ
ちゃって、まるで子供みたいでしょう」

 洋子は、麻美から会社での隆のことを話に

聞いて、思わず笑ってしまった。

「そんなに忙しかったんだ」
「そう。仕事が多すぎて、隆は明日の土曜日
だけで全部終わらせるなんて言っているけど
はっきり言って無理だから。日曜日は、私た
ちはヨットには行けそうもないのよ」
「そうなんだ。残念だけど、忙しいんだし仕
事じゃ仕方ないよね」

 洋子は、麻美に言った。


「今度の日曜日は、洋子ちゃんたちはどうす
る?」
「うーん。隆さんがいないと、私たちだけじ
ゃ、ちょっとヨットを出すのは何かあったら
いけないから、できないから」
「洋子ちゃん、ヨットがうまくなってきてい
るから、きっと来年ぐらいには、隆がいなく
ても、洋子ちゃんが中心になって出航できる
ようになっているよね、きっと」

 本当に自分がそうなれるかどうかはわから
ないが、麻美にそう言われて洋子は、なんと

なく嬉しかった。

「今度の日曜日は、ヨットは出さないけど、
ほかの皆と横浜マリーナに行って、クルージ
ング後の片づけとかしながら、船の中でのん
びりしていてもいい?」
「もちろん、いいわよ。マリーナに預けてあ
るヨットの鍵の場所知っているよね?」
「うん、わかる」

 洋子が、さっき隆に電話したときは、隆か
らは、ヨットに行くと聞いていたが、今の麻


美の電話で、どうやら今度の日曜は、隆と麻
美は、ヨットには遊びに来れそうもないって
ことがわかった。

 ほかのメンバーは、洋子をはじめ、雪、ル
リ子、佳代も予定は空いていたので、船は出
さないけど、ヨットには、横浜マリーナへは
遊びに行くことになった。

「お昼ごはんとか大丈夫?私、お弁当作るか
ら、会社に行く前に、洋子ちゃんとどこかで
会って渡してあげようか?」

「え、大丈夫よ。マリーナにお弁当売ってい
る売店もあるし、ショッピングスクエア内の
スーパーで材料を買ってくれば、ヨットのギ
ャレーでお料理できるから、皆で作るよ」
「そうよね。洋子ちゃんだってお料理上手だ
ものね」

 麻美は言った。

 隆は、まだ土曜日じゅうに仕事は全部終わ
らせて、日曜には、横浜マリーナに遊びに行
くつもりでいたが、麻美たち女性陣の間では


すっかり隆と麻美は、お休みで、ほかのメン
バーたちだけで日曜日は遊ぶ予定で、話はし
っかり進んでいた。

第99回につづく