お薬を探そう

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

「あー、なんとかしなければいけないな」

 私は、そう考えていた。

 昨日は、悪夢のような診察だった。最初の
クダを外したとき、おしっこが出なくても、
まあ仕方ないかもしれなかった。
 が、昨日のクダ外しは、2回目のクダ外し
なのだ。2回目なのだから、そろそろ、おし
っこは、まともに出てほしかった。

 なのに、一番はじめの赤いおしっこのよう

な、鼻血のようなのが、ほんの少ししか出て
いないのだ。

「これは、なんとかしなければ」

 いちおう、昨日の病院の帰りには、新たな
ユリーフを2週間分もらってきてはいた。
 前回のユリーフ2週間分は、昨夜の食後に
飲んでしまったのが最後だ。
 今日からは、新たなユリーフ2週間分を飲
み始めるのだ。
 いや、早速、今朝の朝食の後に、1個目を


飲んでいたのだ。

「もし、次、出なかったらどうしよう・・」

 私は、次の診察日、2週間後のクダを外し
たときの結果が恐かった。もちろん、そのと
きに、普通におしっこが出れば、何の問題も
無いことなのだが、どうしても出ない想像し
か出来なかった。

 今朝のおしっこ、トイレに行ったときにも
何かビクンビクンと引っ張られるような感覚

があって、今までならば、これはおしっこが
出るように治ってきている証拠だと楽観的に
考えられたのだが、今は、そんな風には思え
なかった。

「また出ない気がするな」

 私は、いろいろ考えた結果、もしかしたら
ユリーフ以外に、もっとおしっこが出るよう
になる、もっと強い薬があるのではないかと
思った。


「ネットで探せば、多少怪しそうなおしっこ
が出ない人のための薬が、何かあるかもしれ
ない」

 そう思って、パソコンを立ち上げると、ネ
ットで「おしっこが出る薬」と検索た。
 すると、おしっこが出ない、出にくい人の
ための薬がいろいろと出てきた。それらのペ
ージを、あっちこっちいろいろ読み散らして
いた。

 そして、

 おしっこが出にくいことを「頻尿」という
ことを知った。

 なるほど、おしっこが出にくいことは、専
門用語で頻尿というのか。早速、今度はネッ
トに「頻尿」と入力して、検索してみた。

 すると、出るわ。出るわ。

 頻尿に良いという薬が、大量に表示されて
きた。こんなにあるのならば、ユリーフでな
くても、多少リスキーでも、もっと効き目が


強くて、おしっこに効く薬があるのではない
かと思った。

「多少リスキーでも、今大事なのは、おしっ
こが出ること」

 そう思った私は、ネットで探せば、きっと
お医者さんからは多少リスクがあるので絶対
に奨められないが、おしっこの効きだけは、
はるかに優れているという薬が入手できるの
ではないかと思った。

 そのときの私は、まず、おしっこが出るよ
うにしたいということが先行していて、お医
者さんが多少リスクあるからと奨めない薬で
も、おしっこが出るようになるのならば、別
に構わないと本気で思っていた。

 そして、頻尿に効くという薬を、あっちこ
っちずっとネットで検索してまわっていた。
 これだったら良いかな、とも思える薬も、
検索した中にはあったのだが、それもよく詳
細を読んでいくと、どうも自分の身体の状況
にはあっていないような気がする。


 頻尿とは、おしっこが出にくいことだ。つ
まり、おしっこは出にくいだけのことで、多
少出にくくても、あくまで、おしっこはちゃ
んと出ているのだ。
 それを出やすくするのが、頻尿の薬だ。

「私の場合、出にくいのではないものな。全
く出ないのだ」

 多少でも、おしっこが出る人のための薬で
は、全くおしっこが出ない私のような人には
どうも向いていないのだ。

「だから出にくいんじゃない。出ないんだ」

 頻尿の薬の説明のところに書いてある、あ
なたの出にくいおしっこが見違えるように出
やすくなりますという文章に、ひとり言の文
句を唱えてしまっていた。

「だから、出にくいんじゃないの」

 別の頻尿の薬の説明文にも、見違えるよう
に出やすくなりますと書いてあった文章に対
して、またまた文句を言ってしまっていた。


 それぐらい、どの頻尿の薬も皆、出にくい
おしっこが出やすくなるということばかりを
強調しているのだった。

「おしっこ出ないの!」

 何個目かの頻尿の薬の説明文を読んだ後に
私の頭に思い浮かんだ言葉を、そのままパソ
コンの検索画面に打ち込んでやった。

 すると、Googleくんったら、まるで
私の「おしっこ出ないの」に答えるように、

おしっこが出ないということを書いているペ
ージをいろいろ検索結果に表示してくれた。

「へえ、あなたも、おしっこ出ないんだ」

 それらのページを順番に読んでいきながら
つぶやいていた。
 自分と同じように、おしっこが出ないこと
を悩んでいる人がこんなにいるんだという親
近感からだろうか。

 そして、おしっこが出ないことが書かれて


いるページをいくつも読んでいるうちに、お
しっこが出にくいことは「頻尿」、おしっこ
が全く出なくなることを「尿閉」ということ
を知った。

「そうか!私は尿閉なのだ!」

 そのことを知ったとき、思わず叫んでしま
っていた。

 今までずっと、頻尿の薬ばかり眺めていて
そこの説明文に書かれている出にくいおしっ

こが、見違えるように出やすくなるの言葉に
文句ばかり言っていたが、それはそうだ。
 頻尿の薬ばかりを検索していたのだから、
出にくいおしっこが、出やすくなる案内ばか
りしか出てこなかったのだ。
 しごく当然のことだ。

「尿閉で探さなければいけなかったんだ」

 出て来ないはずだよな。私は、それに気づ
いて「頻尿」ではなく「尿閉」で検索し直す
ことにした。


 すると、今度は、尿閉に関することがいろ
いろ検索結果に表示されるようになった。

「あるじゃん。あるじゃん」

 これで見つかると思った私は、順番に検索
結果に表示された尿閉のページを開いて、読
んでいった。
 おかげで、尿閉というものについての知識
は、かなり深まった。
 しかし、尿閉に良いという薬は、良いもの
がひとつも見つからなかった。

 そもそも尿閉に効くという薬が無さそうな
のだ。いや、あるのだろうけど、私の「尿閉
」での検索結果にはうまく出て来なかっただ
けなのかもしれない。
 尿閉になりました。では、どうしたら良い
のかというところまで読み進んでいくと、ど
のページも皆、お医者さんに相談しましょう
で終わっているものばかりだったのだ。

「それじゃダメなの。薬が欲しいんだ」

 私は、尿閉での検索結果をかなり奥のペー


ジまで全部読みあさった。
 おかげで、尿閉に対する知識だけは、どん
どん深まっていくのだが、肝心の尿閉に効く
という薬がぜんぜん出て来ないのだ。

「これはダメだな。何か別の検索の仕方にし
ないと、尿閉の薬は、ぜったいに見つからな
いだろうな」

 しかし、散々、尿閉で検索して回った後な
ので、もう何のワードで検索したらよいのか
ぜんぜん頭に浮かんでこなかった。

「一回、頭を切り換えて、仕切り直ししない
とだめだな」

 私は、その日のお薬探しを諦めて、尿閉に
効くお薬探しはまた後日にすることにした。

「お薬発見!」につづく