千葉クルージング

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第35回

 隆は、デーセイリングに出かけたラッコの
 ラッコは、それほど強くはないが、中風ぐ
らいの風に押されながら、千葉に向かって順
調に走っていた。

 今日は快晴。

 風は、ヨットが帆走だけで走るためには少

し弱めかなって感じではあったが、初クルー
ジングとしてはまずまずの天気だった。

 ラッコとマリオネットは、横浜マリーナを
出航すると、すぐにセイルを上げてセイリン
グを始めた。

 セイルを上げるとすぐにエンジンを切った
が、風が弱くセイリングだけで走っていると
千葉は対岸に見えているとはいえ、そこに今
日じゅうには到着できなくなってしまいそう
だったので、エンジンもかけて、エンジンと


セイル、風の力のハイブリッドで、機帆走で
向かうことになった。

 ラッコの乗員は、隆に麻美、ルリ子、洋子
雪、佳代の6人だった。
 マリオネットは、中野さんをはじめ、もう
数年一緒に乗っているクルーの男性1人とラ
ッコの生徒たちと同じく今年のヨット教室で
ヨットに初めて乗るようになった生徒が、男
子2名、女子1名だった。

 雪は、初めて出かけるクルージングに何を

持っていたら良いのかわからなかった。
 とりあえずヨットの中でお泊りするのだか
ら、着替えとパジャマは必要だと思った。
 ほかには化粧道具、洗面、タオルに、携帯
電話と何かのときに連絡できるようにパソコ
ンも必要かな・・と思いつく物を次々とバッ
グに詰めているうちに、バッグは物でパンパ
ンに詰まって、ものすごい量の荷物になって
しまった。

「あなた、たった一泊してくるだけなんでし
ょう。北極に探検にでも行くつもり?」


 大きなバッグを抱えて、自分の部屋から出
てきた雪の姿を見て、雪の母親は、思わず大
声で笑ってしまっていた。

 雪は、母親に笑われて、自分でも確かに多
いかなって思い、少し減らそうかともう一回
荷物を見直してみたが、初めてのクルージン
グでかってがわからないため、家に置いてき
てしまって、クルージング中に困るかもと思
うと、あまり荷物を減らせなかった。

 大きな荷物を持って、横浜マリーナに到着

すると、洋子やほかのラッコの生徒たちも皆
大きな荷物を持ってきていたので、皆、自分
と同じだと少し安心した。

 ただ、麻美だけは、春先に隆と二人で千葉
クルージングに行っていて、クルージングを
経験しているので荷物はコンパクトにまとめ
られていた。

「まずは、お買い物に行ってこようか」

 隆が言った。


 横浜マリーナには、併設のショッピングス
クエアがマリーナのすぐまん前にある。
 ショッピングスクエアは、マリーナの関係
者でなくても誰でも買い物できるが、マリー
ナに船を置いている人も、どこかにクルージ
ングに行くときとかに、よく買い物に利用し
ていた。

 特にショッピングスクエアの中には、スー
パーが一軒入っていて、そのスーパーはマリ
ーナの人も便利で頻繁に利用していた。

 クルージング中に船で食事する分の食材、
飲み物、氷などを、ほとんどの船は、そこで
購入していた。

「私と何人かで買い物して来るから、隆と何
人かでヨットのほうの準備をしておいて」

 麻美は、ルリ子と佳代を連れてスーパーに
食料品を買いに行った。

 残ったメンバーは、その間にヨットが出航
できるように、船でセイルなどの準備をした


りしていた。

 麻美たちが、大きなレジ袋を持って、スー
パーから帰って来ると、ヨットに積んで出航
となった。

「ずいぶん買い込んだね」
「あれも、これもって選んでたら、ちょっと
多く買いすぎたかな」
「一泊だけなのに・・」
「いいのよ。余ったら、来週とか夏のクルー
ジングに行くとき食べるから」

 麻美は、隆に言った。

第36回につづく