少人数で快適!ミニポケットクルーザー

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第33回

 ラビリンスは、見た目も可愛らしいちょっ
と素敵なヨットだった。
 ラビリンスの艇種は、マスコット28とい
った。

 ラッコと同じく北欧製のセイリングクルー
ザーだった。
 オーナーは中村さん、小さなパン屋さんを

経営している方だ。
 中村で、パン屋なので、よくあの大きなパ
ンメーカーの社長さんと勘違いされていた。

 でも、あの中村パンのような機械で大量生
産ではなく、ひとつひとつ手作りで味のある
パンを焼いているので美味しく、隆は中村さ
んのお店のパンのほうが好きだった。

 中村さんのお店は、横浜マリーナからすぐ
近くの商店街にあった。
 隆も、ヨットを乗り終えた後、横浜マリー


ナからの帰り道に、よくお店に寄ってパンを
買って帰っていた。

 ラッコを北欧で建造しているときには、隆
も休みを取って、実際に建造中のラッコの姿
を見に行き、船の確認をしていた。

 だが、中村さんは、北欧には一度も行った
ことがなかった。それどころかラビリンスの
建造中のことをひとつも知らなかった。

 中村さんがラビリンスと初めて出会ったの

は、東海の名古屋港、そこにあるマリーナの
バースにラビリンスは既に浮かんでいた。

 以前のオーナーが、マスコット28の艇種
を気に入り、北欧の造船所に発注し、日本の
名古屋まで個人輸入したのだった。
 それを中村さんは、前オーナーから中古で
購入したのだった。

 隆のラッコやスローライフのように、造船
所に発注して新艇で購入する人もいるが、中
村さんのように既に進水しているヨットを中


古で購入する人も多かった。

 どちらかが良いということはないが、新艇
の場合は、全くの新品で手に入れられるが、
中古艇だと限られた予算内で、好みのヨット
が購入できたりする。
 輸入艇の中古だと、煩わしい輸入手続きを
しなくても良いなど、それぞれに、それぞれ
のメリットがあった。

 ラビリンス、マスコット28はダブルエン
ダーのぷりっとしたお尻が可愛らしいミニポ

ケットクルーザーだ。

 ダブルエンダーとは、普通のヨットは波切
りが良いように、船の先端が丸くなっている
が、ダブルエンダーの船は、先端だけでなく
船の後部も両端が丸くなっている。

 ヨットの両端が丸くなっているのは、単に
流線形のデザインが流行っているとかだけで
はない。メリット、デメリットは、前方から
の波、風にも、後方からの波、風にも対応で
きるなどいろいろあった。


 ラビリンスの後部デッキ上では、ティラー
を操作して舵を取れるようになっていたが、
その前方には、船内でも舵を取れるように小
さなパイロットハウスが備わっていた。

 船内のパイロットハウスはミニクルーザー
なので、ラッコほど広くはないが、操縦席に
腰かけるとすべての操舵装置が手に届くとこ
ろにあり、操作性は抜群だった。

 その横、左舷には小さなギャレーも備わっ
ていて簡単な調理ならば、一通りなんでもで

きるようになっていた。
 パイロットハウスとデッキのコクピットは
つながっていて、出来上がった料理は、ギャ
レーからすぐに手渡しでコクピットの人に出
せるようになっていた。

 コクピットには折りたたみのテーブルが収
納されていて、それを出せばすぐに食事が楽
しめるようになっていた。

第34回につづく