表彰式

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第131回

 横浜マリーナのクラブハウスからは、美味
しそうな料理の匂いがしていた。

「なんか、美味しそうな匂いがする」
「お腹空いてきちゃうね」

 さっき、キャビンでお昼ごはんを食べたば
かりだというのに、麻美が言った。

 今日のレースは、今年最後のクラブレース
なので、優勝者の表彰式を兼ねて、クラブハ
ウスで小パーティーが開かれるのだった。

 今日のパーティーは、横浜マリーナのショ
ッピングスクエアに出店しているお寿司屋さ
んとお肉屋さんからの差し入れがあるので、
料理が豪華らしかった。

「ラッコさん、手伝って」

 ラッコのメンバー皆が、階段の下のところ


に座って、パーティーが始まるのを待ってい
ると、上から声をかけられた。

 アクアマリンのオーナーの奥さんだった。

「女性の手が足りないのよ。お料理の盛りつ
けを手伝ってもらえないかしら」

 女性クルーの多いラッコは、アクアマリン
の奥さんの後ろについて、クラブハウスの中
に入ると、お料理の準備の手伝いを始めた。

「美味しそう!」

 用意されている料理を見て、洋子は思わず
叫んでしまっていた。

 寿司や肉だけじゃなくて、サラダ、ケーキ
などサイドメニューもかなりのボリュームで
豪華な料理が並んでいた。

 肉については、大きな塊がそのまま、クラ
ブハウスの天井からぶら下がっていて、差し
入れてくれた肉屋の店長が、そこから包丁で


薄く切って焼いていた。

 バーカウンターには、ワインやシャンパン
などが陳列されていた。
 高級なウイスキーやバーボンまでにが豊富
に用意されていた。

「それではパーティーを始めます」

 レースの参加者だけでなく、レースに参加
していなかった船のオーナーさんやクルーも
集まって来て、理事長の挨拶をスタートに、

パーティーが始まった。

 差し入れてくれた寿司屋や肉屋が紹介され
て、パーティーが始まると、肉屋の焼いてい
るコーナーには、お皿を持って肉を待つ人の
行列で、いっぱいになっていた。

「隆、なにを飲む?」
「俺、ビール」
「せっかく、もっと高級な飲み物があるとい
うのに、ビールだなんて」


 麻美は、カクテルを手にしながら、いつも
のビールを飲みながら食事している隆に苦笑
していた。

 パーティーのさなか、表彰式が始まり、理
事長の手から優勝カップや表彰状が、優勝艇
に手渡されていた。

 今年の総合優勝艇の表彰の前に、まずは今
日のレースの優勝艇の表彰があった。

 レーシングクラスの表彰に続いて、クルー

ジングクラスの表彰があり、マリオネットの
オーナーの中野さんが壇上に呼ばれた。

 中野さんは、初の表彰台に満面の笑みを浮
かべて表彰台に立っていた。

「さすがだね、隆君。隆君が乗ったから、マ
リオネットは勝てたんでしょう」

 中野さんが、表彰されている姿を見ながら
隆の側に寄って来たクラリネットのオーナー
が、隆に言った。


「そんなことないですよ」
「彼女、すごいよね」

 クラリネットのオーナーは、隆だけでなく
佳代の存在をも褒めていた。

 隆から佳代は、今年からヨットを始めたば
かりのヨット教室の生徒だと知らされると、
なおさらに驚いていた。

第132回につづく